Producing Countries News Letter〜Central America〜
THE COFFEE TIMES
Economics
Coffee
Society
Projects
MEXICO
Vol.
05
SAN PABLO
2019
About Mexico
・人口:約1億2,920万人(2017:国連)
・首都:メキシコシティ
・言語:スペイン語
・主要産業:石油、製造業など
・名目GDP:1兆1,510億ドル (2017:IMF)
・経済成長率:2.1% (2017:IMF)
・失業率:3.42%(2017:INEGI)
Coffee in Mexico
・生産量(2018/19):450万袋(各 60kg袋)estimate
・生産国ランキング(2018):第9位 (中米で2位) 現在、メキシコでのコーヒー産業は、 同国南部の4つのエリア(チアパス、 オアハカ、ベラクルス、プエブラ)が 中心となっており、多くはオーガニッ クコーヒーやフェアトレードコーヒー 等の認証コーヒーのマーケットで シェアを占めています。それは、メキ シコでのコーヒー産業の歴史を振り 返ると見えてくる、行政の支援が途 絶えた後、独立した環境下で栽培 を続ける生産者とそれらの人々をサ ポートする組織の努力の賜物といえ るかと思います。ちなみに、現在でも コーヒー産業の従事者の大半は小 規模農家で、行政サービスのあまり 行き届いていない貧困地域での生 産となっています。
まずはメキシコでのコーヒーの歴史 をご紹介したいと思います。 大きな流れで言いますと、『スペイン からの入植者たちによってもたらされ たコーヒーを小規模生産者が少しず つ生産を拡大させていましたが、 1980年代の政府のデフォルトにより 一端は激減した生産量を、協同組 合や市民団体の活動により、世界第 9位の生産量にまで回復した。』とい う流れです。
メキシコに初めてコーヒーの 木が植えられたのは、18世紀 後半、スペイン人の入植者が キューバやドミニカ共和国か ら持ち込んだものがルーツと なっています。
その後、1790年代に最初の コーヒー農園がベラクルス南 部に開園されます。他のカリ ブ海諸国や中米諸国と異なり、 メキシコに移住してきたスペ イン系の人々は、植民地時 代が終わってからもずっとメキ シコ(南部)での土地所有を 続け、コミュニティの形成など に取り組んでいます。
スペインからの独立後、フラ ンスやアメリカなどとの領土 問題で不安定な時期もありま した。この頃、メキシコ南部で は先住民とその他入植者た ちとの間で土地の分割が進 められ、人々がまじめにコー ヒー栽培に向きあい、コー ヒー農園が急速に拡大してい きました。
その後、グアテマラとの国境 問題が解決すると、未登記 だった国境付近
でもコーヒー農園が始められ、農園主たち はより積極的にコーヒー事業 への長期的な投資に取組め るようになっています。 1900年代中頃からにメキシコ 国立コーヒー研究所が開設さ れ、生産者への技術的なサ ポートや市場への輸送手段の 供給などを進めていました。
一方でICA(ロンドンに拠点を 持つコーヒー事業者の共同 団体)と協力することで、メキ シコのコーヒーを国際市場へ 供給するべく活動を進めてい た結果、コーヒーの生産量は 一気に拡大していきました。 しかしながら、政府のサポート はコーヒー事業を対象とした ものとどまり、主要産地のチア パスやオアハカなどでは公共 サービスが欠如したままで、 貧困地域から抜け出せずに いました。
その後、1980年代、海外債 務の拡大やオイル価格の下 落により、メキシコ政府がデ フォルト状態に陥ったのをきっ かけに、コーヒー産業はより自 由化に向けた取り組みが進め られるようになりました。
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その後の約10年、メキシコ政府はコーヒー生 産者へのサポートをわずかながら続けていまし たが1989年にINMECAFEの継続も不可能と なり、サポートが終了しました。期を同じくして ICAもなくなることとなり、これらの影響は小規 模農家にとって計り知れないものでした。
1985年の一次産品の輸出総額の内、コー ヒーは882百万ドルを占めていましたが、1991 年には370百万ドル以下まで落ち込んでいま す。INMECAFE不在時、ブローカーにより取 引は媒介されていたものの、農民たちは情報 の欠如、市場へのアクセス方法の欠如などに より、コーヒーの販売が難しくなっており、状況 の改善が急務とされていました。
INMECAFEの崩壊前から、政治不安の影響 を受けにくい民間組織の必要性は明確でした が、1990年頃よりCEPCO(the Oaxacan State Coffee Producers Network)や UICIR(Union of Indigenous Communities of the Isthmus Region)といった団体の活動 が小規模農家にとって大きなサポートとなり、 コーヒーの生産に向けた前向きな取り組みが 始められました。
CEPCOは1993年からオーガニック作物の生 産を推進し、フェアトレードによって得た利益 はメンバーの為に使われています。 具体的には女性組織の促進や技術サポート、 生命保険、インフラ整備などです。現在90% は2ヘクタール以下の小規模農家で組織され ており、34の地域団体で構成されています。 これらの協同組合は安定した販売価格と収穫 前の資金調達を可能にし、コーヒーの輸出取 引を正常な状態に近付けることに貢献してい ます。
また、INMECAFEに代わり生産者をサポート するだけでなく、有機コーヒー業界でのポジ ションを確立させ、環境への取り組みや学校、 病院などの社会サービスの提供も行い、経済 的にも多様な支援を行っています。 このようなメキシコでの協同組合や市民団体 の成功事例は世界で最も魅力的な社会運動 としても注目されています。
ここまで見てきたように、メキシコは政治的な 動向に左右されながらも現在はオーガニッ クコーヒーという一つの強みを活かし、主要 なコーヒー生産国の一つとしてのポジション を担っています。
次に政治的な動向や社会情勢、そしてコー ヒーの生産地域が抱える問題などを取り上 げながら、メキシコの課題解決に向けた民 間プロジェクトを少しご紹介します。
まず初めに、数値データを見ていきます。メ キシコの名目GDPは2017年で1兆1,510億ド ルです。一人当たりGDPは9,319ドル。 以前にもご紹介したSCAのEric理事は、 2018年のシンポジウムにて、下記のような情 報を紹介しています。 1世帯当たりの【132lb(60kg)での袋数 / コーヒー豆重量 / 昨年の平均売買価格 ($/lb) / 年間売上額⇒farmgate price(農 家の最終受取額) / 法的な年間最低賃金 / 所得-最低賃金】をまとめると、メキシコは、 【11袋 / 1,452lb / 1.4$/lb / 2,032$⇒1,220$ / 1,788$ / ▲568$】となり ます。ここから、コーヒー生産者の年間の所 得は、他の事業からくる所得を加味したとし ても、おそらく国全体でみた1人当たりGDPを 大きく下回るものになっていることが推測でき ます。
尚、国際貧困ライン(1日1.9ドル以内で生活 を強いられる人口)を基準に考えた時の貧 困率は、人口に対して2008年44.4%、 2010年46.1%、2012年 45.5%、2014年 46.2% 、2016年43.6%と一定の範囲にとど まり、全体の半数近くが貧困ラインを下回っ ています。
一方で、近年世界の主要自動車メーカーが メキシコに進出しつつあります。その理由とし ては、北米自由貿易協定に参加しているこ とや中南米との貿易協定、各国との貿易自 由協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の締 結など、世界各国との自由貿易網があるメ キシコを生産拠点にして世界での貿易取引 をスムーズに行う構想がグローバルカンパ ニーにとっては描きやすいということです。
このように世界の自動車メーカーのメキシコ 進出など、海外からの投資が進む中、メキシ コ国内の高い貧困率や後に触れる政治汚 職、麻薬カルテルなどカントリーリスクにも注 視が必要です。
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ここで、メキシコの大きな社会問題について触れ てみたいと思います。
『所得格差、政治汚職、教育、貧困』の4つが特 に挙げられます。 工業化が進み経済的には発展しつつある一方で、 貧困率が非常に高いメキシコでは、所得格差激 しく、それが原因でデモンストレーションが頻繁に 発生し、またアメリカへの移住を考える市民が増 えるなど、社会基盤の揺らぎが続いています。
また、デモやアメリカ移住の理由としては慢性的 な汚職もあげられます。Transparency Internationalによる2014年の政治腐敗指数の 調査では、驚くことに100ポイント中35ポイントの 評価で175か国中103番目の透明性という不名誉 な評価となってしまいました。
その理由として2000年に終結するまで約70年間 一党による政治運営があったことがあげられます。 規制解除後もいったんは別政党が第一党となり 政治運営を行ったものの、現在はまた元の政党 が返り咲くなど、市民の信頼を回復するような変 化はあまりみうけられません。こうした状況に対す る社会運動やデモでは、透明性及び誠実な政府 を求めています。
また教育面に関しても、汚職は影響しており、以 前の教育労働組合は機能せず(トップが自身の 私欲のため資金を流用していたこともあります)、 現在のメキシコの教育水準は低く、中退するもの も多く、全体の37%が高等教育を受けているの みです。初等教育の就学率は100%を超えてい るものの、悪化傾向にあります。 この水準は34のOECD加盟国の中では下から2 番目の水準です。このような低い教育水準は国 の発展や人々の機会均等を実現する妨げとなり、 貧困や不平等といった問題を悪化させる要因と なります。
このように、ややネガティブな側面が依然として残 るメキシコの現状ではありますが、比較的自由貿 易の体制が整っているという経済的なメリットがあ り、また経済大国アメリカとの距離が近いという地 理的要因も影響し、今後もポテンシャルが期待で きる国ではあります。
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≪Mois Cherem (ENOVA)≫ education ENOVAとは、恵まれない地域社会に対してテク ノロジーを用いて教育へのアクセシビリティを改 善させるための事業です。 2013年には世界経済フォーラムでSocial Entrepreneur of the Yearを受賞するなど、多く の受賞歴のある世界的にも注目されているITを 教育分野に活かした事業モデルをとっています。
具体的には、電気通信、ソフトウェア開発、オ ペレーティングシステム、技術サポート、新し い技術やシステム情報の分析などに取組、よ り良い学習環境の提供を行っています。 欠陥の多いメキシコの教育システムから離れ てしまった低所得地域に教育センターを設立 し、様々な分野のeラーニングコースを設定し、 子供たちがモチベーションを維持できるような 内容で学習するためのオンラインシステムに も工夫を凝らしています。また、生徒が利用し た情報を元にシステムの更新が行われ、常に システム面に対する配慮もなされています。
これらの教育センターは、事業開始後、最初 の4カ月で10つの教育センターをスタートさせ ています。この事業の成功はメキシコの経済 及び社会の発展に対してとても大きなインパ クトをもっており、今後の発展が気になる事業 です。
≪Patrick Struebi (Fairtrasa)≫ agri business 小規模農家を貧困から脱出させるためのサ ポートを行う社会的企業です。有機栽培に取り 組みたい生産者やそれらを輸出まで行いたい 生産者に対して、トレーニングやリソースを提 供しています。そして、この事業を通して地域 経済の発展、社会貢献、環境保全といったプ ラスのインパクトも同時に生んでいます。 2005年に設立されてから、現在では12か国で 展開するグローバルグループで、現在では 6500以上の小規模農家と連携し、ラテンアメ リカで最大級のオーガニック、フェアトレードフ ルーツの輸出を行っています。
事業開始当初は、世界的なフェアトレードムー ブメントの一部でありましたが、世界中の小規 模農家の生活の改善を目的としたこのムーブ メント、フェアトレードプレミアム(価格)では継 続的な発展には不十分だと気づき、地域コ ミュニティや農家が期待している包括的な解 決策を模索し、特徴的なモデルの構築に至っ ています。
この開発モデルでは、Fairtrasaの専門家だけ でなく、パートナーの開発機関と協力しながら 個々の農家にあったトレーニングを行い、輸出 の専門業者や農業に関する起業家となれるよ う後押しを行っています。
その結果、この開発モデルは6か国まで活動 を広げ、小規模農家の収入を10倍にまで成 長させ、農家やコミュニティの何千人もの生活 に対して、根本的で実現性のある継続可能な 変化を生み出しています。
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社会的な基盤を作る子供たちへの教育環境を整える事業、そして多くの小規模農家及び地域 コミュニティへのサポート・エンパワーメントを行う事業、それぞれ今後の発展の下支えになる重 要な事業です。これらのモデルはメキシコ以外の国、アジア、アフリカの途上国でも役に立ちそう なモデルケースになり得ます。
今回は2人の起業家にしか触れることができませんでしたが、メキシコでは学生起業家も活躍し ていると話に聞きます。ご興味ある方は、是非チェックしてみてください。
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SAN PABLO
メキシコ・サンパブロ農園は、オアハカ州プルマ 地区に位置しています。1920年からコーヒー農 園をはじめ、現オーナーのカルロス氏が1960年 から有機栽培をすることを決意し、現在まで継続 されています。
年間生産量は90t程度しか生産せず、産地の特 定ができるスペシャルティーコーヒーです。サン パブロ農園で生産されるほとんどのコーヒーは ティピカ種でシェードツリーを使用し、暖かく恵ま れた気候、800〜1300mの高地で栽培されます。
また、2018年のメキシコで開かれたCup of Excellence(コーヒー品評会)では見事入賞し、 丁寧な生産スタイルと品質維持を両立させてい います。 *弊店での使用品種とは異なる品種での入賞で す。
EL TRIUNFO CAFEINLESS
メキシコ・チアパス州のエル・トリウンフォ環境保全団 体に加盟する79農園が生産したコーヒーを、メキシコ にあり様々な有機認証を取得している「Descamex社」 がマウンテンウォーター製法という方法で科学的な薬 品を一切使用せず、安全にカフェイン除去したコー ヒーです。(カフェイン除去率 99.9%)
メキシコの天然水を使い、天然セルロースと活性炭を もとに作られた特殊なフィルターによってカフェインを 除去。カフェイン以外の成分の損失を抑えられるため、 コーヒーの味わいと香りを残したカフェインレスコー ヒーに仕上げられています。
(商品情報)
●地域:チアパス州 アンヘル・アルビーノ・コルソ
●農園: エル・トリウンフォ環境保全団体に加盟する79農園
●精製方法:マウンテンウォーター製法
●香り:バタービスケット、バニラ、ローストキャラメル
(商品情報)
●地域:オアハカ州プルマ地区
●農園:サンパブロ農園
●標高:800m ~ 1300m
●精製方法:水洗式
●品種:主にティピカ
●香り:ジャスミン、バニラ、キャラメル
健康上の理由でカフェインの摂取を控えた い方や妊娠中・授乳中の方などにもオスス メですが、日常的にコーヒーをよく飲まれる 方にもスペシャルティーコーヒーとして十分 にお楽しみいただけるコーヒーです。
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