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Producing Countries News Letter ~Africa~

THE COFFEE TIMES

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Democratic Republic of Congo

Vol.

06

2019

About DRCongo

・人口:8,134万人(2017:国連)
・首都:キンシャサ
・言語:フランス語(公用語)
・主要産業:農林水産業、鉱業
・エネル ギー業、製造業
・名目GDP:376.4億ドル(2017:世銀)
・経済成長率:3.7% (2017:世銀)
・失業率:4.2%(2018:ILO推計)

Coffee in DRCongo

・生産量(2018/19):34万袋(各 60kg袋)estimate
・生産国ランキング(2018):第27位
アフリカで2番目の面積を持ち、非 常に資源豊かな国コンゴ民主共和 国は、過去数十年、長らく続いた紛 争や国内政治の腐敗などによって 非常に荒廃したものになっていまし た。
1980年代のピーク時には平均 100,000-120,000トンものコーヒー (内80%はロブスタ種)を年間で輸出 していました。 しかしながら、その後の紛争により国 内が荒れていくにつれ、コーヒー栽 培を放棄し長らく手付かずになって いた農園も多く、生産者も年を重ね、 またコーヒーの木も病気にかかり、生 産量は落ち、一時は年間輸出量が 5,000トンにまで落ちていました。
 
一方で、生産者たちはより高値で購 入してもらえる近隣諸国へ密輸する ことなども多く、国内が落ち着き始め る2000年頃のデータは確かなもの ではないかも知れません。 その後、状況が次第に落ち着き始 め、公共部門と民間部門の中で商 業的な利益とそれに向けた規制緩 和を求める声が多くなり、2015年に は相互の合意がなされました。
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合意の中身としては、抜本的 な改革のため、輸出税と手数 料に上限を設けること、政策 の見直しや行政の冗長性の 改善などと共に、公共部門と 民間部門の利益を一致させ るための協調的な取組みが 進められることとなりました。 より具体的には、まずは近隣 諸国への密輸を減らすため に、生産性や品質の改善、ま た精製処理/水洗工場の改 善などへの資金供給策へ対 応することでした。尚、水洗工 場に関しては、2011年には7 つしかなかったものが、2018 年には100もの水洗工場が稼 働するようになっています。 また、それまでにも状況は少 しずつ改善に向かっており、 2012年のトップグレード(K3) のアラビカコーヒーの輸出量 が8.94コンテナだったのに対 して、2017年には39.12コン テナまで増えています。
その背景に団体やブランドが 徐々に形作られてきたという こともあります。
特徴的なものとしては女性団 体les Femmes Congolaises dans le Café & Cacao (IFCCA)があります。女性に よる女性のための団体で、そ の流れをくみ女性のみで栽培、 収穫、精製、管理されている “Café Femme”というブランド も立ち上げられています。 また、1965年に創業された Coffeelacなどは国内のコー ヒーブランドとしても有名です。 新しいところでは、2015年に 創業のCafé Kivuや2017年に 創業のLe Petit Chaletという コーヒーショップによって、国 内消費の増加やコーヒーの 品質に対する意識の向上に も貢献していることかと思いま す。 尚、現在コーヒーで生計を立 てている農家(生計のうちコー ヒー関連の収入が一番ウェイ トを占める農家)は25万人以 上いるようです。 そして、コーヒーの生産地に ついては、主にコンゴ東部 (Ituri, North Kivu, South Kivu)がメインになっています。
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それぞれの生産エリア/ゾーンについて簡単 に触れてみたいと思います。
 
Bord de Lac : キブ湖に沿って広がるこのエリ アは年間平均気温が16.8℃、平均降水量が 1,637mmであるだけでなく、標高が 1,450~1,800mにもおよび、理想的な生育条 件に恵まれています。一般的には穏やかな酸 とトロピカルフルーツ、りんご、ジャスミン、チョコ レート、オレンジ、ブラックベリーなどの風味を 持っていると表現されます。また、24,000人 以上のコーヒー農家が住んでおり、先述の Café Femmeムーブメントの中心エリアとなっ ています。
 
Ruzizi : Ruzizi地域は16,118㎢もの広大なエリ アをカバーし、平均気温が21.6~26℃、年間 降水量が981~1,549mm、標高が 1,200~2,400m。ミディアムボディでレモンの ような爽やかさやフローラルさ、トロピカルフ ルーツ、メロンの風味で知られています。
 
Grand Nord : North Kivuの北東部に位置 するこちらのエリアはDRCの中でも最も生産 量の多いゾーンの1つです。ルベロとベニという 重要な商業都市が含まれ、24,579㎢のエリア にまたがります。そして気温は16.9~23℃という 比較的穏やかな気候に囲まれ、年間降水量 の平均1,420~1,582mmです。標高は 1,200~2,200mの範囲で、このエリアは世界 的にもロブスタ種の生産でよく知られていまし たが、近年は最高級のアラビカ種の生産で注 目されています。ミディアムボディでトロピカル フルーツ、レモン、ハニーなどの風味特性を 持っています。
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そして、アフリカ最古のヴィルンガ国立公園 に隣接しており、主要生産地への玄関口と 呼ばれることがよくあります。 平均気温が18.9~21.7℃、年間降水量が 1,185~1,596mm、標高も1,400~1,800mで 恵まれた環境にあります。風味特性は滑らか なボディ、ブラックベリー、ブドウ、レモンなど で知られています。
 
Ituri : ウガンダと国境を接するアルバート湖 の岸に沿った5,200㎢の険しい山脈や深い 谷にまたがるこのゾーンは、肥沃な粘土質の 土壌でコンゴのユニークな特徴を生み出し てくれています。生産環境は比較的温暖で 年間平均気温は19.6℃、年間降水量は 1,380mm、標高は1,600~1,900mでこれら の条件がコーヒーの品質と生産量の上昇に 恩恵をもたらしています。
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このようにコンゴ東部を中心としたコーヒー生 産地の中で、バイヤーたちは、現地のしっか りと入り込み、包括的なトレーニングの実施 やソーシングモデルの開発など、生産者と 共に持続可能な形で品質向上に向けた取 組みを広く進めています。
 
次に、1つ特徴的な活動をご紹介します。
 
先述のCafé Femmeが取り組まれているのは ムンガノ組合という南キブを中心に組織され ている組合です。Twinという産地志向型のト レーダーは、2009年にムンガノ組合と長期的 な取組みを始めました。 目的は4つあります。1)グループの評価、 2)Gender Action Learning Systems (GALS / 性別行動学習システム)の基本原則を含 んだコミュニティメンバーの有機的な改善ア クションプランの推進、3)内部統制システム の統合と強化、
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4) Café Femmeのマーケット調査などの潜在的な サポートです。 結果としては、すべてにおいて満足のいくものと なっているようです。
 
このTwinの取組みによって生まれたコミュニティ 内の変化はとても大きく、内部での継続性をもた らしました。それは世帯内でのジェンダーによる役 割分担の解消や、5,000人近くまで拡大した生産 者が、それぞれにオーガニック認証とフェアトレー ド認証の2つの認証を取得していることからも内部 統制システムが働いていることやトレーサビリティ が守られていることがわかるかと思います。
 
またコマーシャルマーケットの中で生産者と消費 者の関係を構築しながら、結びつきを強くする創 造的な方法に、Tip the Farmerというプラット フォームがあります。
Virunga Coffee Companyの国内での取り組みに 基づいて構築されたこのTip the Farmerは、消 費者をより生産者に近づけるという共通ビジョンを 持ったトレーダーやコーヒーショップが実現可能に しました。つまりコーヒーの販売時にアプリを通じ て「チップ」として農家へ感謝を示すことができる のです。それは、トレーサビリティが確保されてい るがゆえに、実現される農家への直接的な還元 に繋がります。
 
一方で、ELAN RDCというイギリスの支援プログラ ムは、コンゴ民主共和国内でロジテック、マイクロ ファイナンス、教育、コーヒー/カカオなどの様々 な分野で技術開発や技術支援などを行っていま す。
Congo Coffee AtlasもこのELAN RDCの取組み の一環で開発されたものです。これはコンゴの コーヒー業界に透明性をもたらしてくれます。オン ライン上でダッシュボードを毎年更新し、買手は 輸出統計、生産ゾーンの説明、カッピングスコア、 フレーバープロファイルの確認はもとより、生産組 合に直接連絡を取ることもできます。
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このようにTip the FarmerやCongo Coffee AtlasというITを活用したツールは、消費者、 やバイヤーが生産者と結びつきを作り、その 背景にはマーケットの透明性やトレーサビリ ティが担保されているという現状があります。
 
先述の団体以外にも、コーヒーのカンファレン ス/品評会としてSaveur du Kivu、カカオや コーヒーなどの輸出協会l‘Association des Exportateurs du Cacao et Café (ASSECCAF) 、多くの途上国で技術支援など を行うTechnoServe、ハリウッドスター ベンア フレックが立ち上げたEastern Congo Initiative (ECI)など、色々な組織がコンゴ国 内で活動しています。
 
日本の関りでいうと、2007年にJICAのオフィ スが首都キンシャサに設けられて以降、警察 研修、浄水場の改修・拡張、保健人材開発支 援、大学院医療機材整備、柔道スポーツ施 設建設計画などがキンシャサを中心に取組ま れています。
 
話は変わりますが、経済指標に関して少し触 れてみたいと思います。
まず経済成長率は、2017年が3.7%。それに 比べ、2018年は5.8% (世銀)と大きく躍進して います。そして、今後も年率6%前後の成長率 が予測されており、国土、資源、新政権を考え るとポテンシャルの感じられる経済環境なのか も知れません。
 
2019年1月に新たに就任されたチセケディ大 統領による政権運営で少しずつ安定した政策 が行われるとの期待があります。アフリカ内外 からも平和裏に行われた政権移行への支持 が相次ぎ、民主主義の定着および経済開発 の一層の進展への期待が高まっています。 チセケディ大統領は貧困対策、福祉、雇用、 教育、保健・衛生、インフラ整備などを優先施 策とした国民の生活水準の向上、経済成長に 向けた経済改革、法制度の改善、政治改革、 財政刷新などへの対応を進めることに言及し ているようです。
 
貧困率については、あまり多くのデータがあり ませんので、データの紹介にとどめておきます が、2012年、1日1.9ドル以下で生活する層は 77%で、2018年でも73%とかなりの水準で高 止まっているのが現状です。
 
雇用状況は、労働参加率(2013)男性73.2%: 女70.7%、失業率(2014) 男性6.7%:女性 9.4%というデータがあがっています。
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教育面は、中等教育卒業率:男児35.2%/女児 18.0%(2012年)、成人識字率(2012)は男性 91.2%,女性73.6%でいずれも100%未満です。
 
一方インフラ面でいえば、携帯電話普及 率:53.0%(ITU World Telecommunication / ICT Indicators Database, 2016)というデータや インターネット加入率:1%以下(2014年)という データが上がっていました。これらに関しては、そ もそもプリペイド式携帯電話の利用が多い同国に おいては、プリペイド利用者が含まれていないな ど、実態と乖離していると言えなくもないですが、 今後の経済発展において、識字率、高等教育、 インターネット普及率、などは気になる指標では あります。そしてコンゴ国内の女性の社会進出に 関する割合も、コーヒー産業のみならず重要な観 点となってくるかと思います。
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最後に、国内の社会課題などへの取組みを進め ている社会起業家をご紹介したいと思います。
 
 
≪Jose Zefu Kimpalou (WapiMed)≫ e-health service
 
WapiMedとはコンゴ民主共和国において医療機 関とユーザーをつなぐ医療サービスサイトです。コ ンゴ民主共和国出身のJose Zefu Kimpalouによ り、医療サービスを提供する人材や設備不足な どの問題に取り組むために創られました。この サービスは他のサハラ以南の国々でも利用可能 です。 それに加え、支払いに関しては、医療系オンライ ンペイメントシステムのMEDpayが対応していま す。これを利用することで、他国にいる親族など が事前に支払いを行うことも可能であり、資金難 で病院に行けないということが回避できるようにな りました。
≪Patricia Gieskes–Veringa (THE JOB FACTORY) ≫ job matching
 
コンゴ民主共和国で生まれ、オランダで育っ たパトリシアは、現在、年35%もの成長率を誇 る人材派遣会社の創業者として注目されてい ます。
若者の失業率が上がる同国において、人材 派遣会社はほとんどなかったようです。その ニッチな分野に目を付けたパトリシアは、立ち 上げこそ国の法律などで手を焼いたものの、 一度開業すると、若者の研修制度を含めて 『適材適所』をモットーに人材のマッチングに よる顧客満足度を高めていきます。
もちろん創業当時は、現地の雇用習慣が基 本的には縁故によるものだということとのギャッ プに対して、優れた候補者を採用することに ついてのロジカルな説明を行う必要がありまし た。 現在は、多くの国際組織やグローバルカンパ ニー、地場の企業からの信頼を得て、コンゴ 国内だけでなく、ルワンダやブルンジへの展 開を検討しています。 最近では、WEBサイトから求人に応募ができ るようになりました。また雇用主へのトレーニン グや、若者へは大学で専門的なスキルを身に つけさせ、そのスキルの活かせる業界と直接 マッチングさせる取組みも行ってます。
 
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≪Meni Mbugha (VIVUYA) ≫ Fashion Designer
デザイナーであるムブガさんは、コンゴ民主共 和国の少数民族であるピグミー族の伝統的デ ザインにインスピレーションを受けた洋服を 作っています。 彼は学校で美術を3年間学んだ後、コンゴ北 東部の森で暮らすピグミー族の家族に出会い、 デザインのヒントを得ました。また、ピグミー族 の地位が向上した反面、彼らが未だに社会的 に差別を受けることから、ファッションデザイン を通し、ピグミー族を支援するプロジェクトを立 ち上げました。
現在、キンシャサの芸術工科大学で講師を務 める傍ら、エコでエシカルなファッションレーベ ルVIVUYAを通して少数民族の支援を進めて います。また、レーベルの中から、NDURAとい うソーシャルプロジェクトを立ち上げ、次の ファッションウィークに向けてEpuluに暮らすバ ンブティー族によって作られたエコファブリック の生産を進めています。
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今回は3社の紹介にとどまってしまいましたが、 その他にもスタートアップ企業など興味深い企 業があるかと思います。またの機会にご紹介さ せていただければ幸いです。
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